2015年6月8日月曜日

ドリフト法、星の流れ、極軸精度・・・6/11,13,19 ,23 ,7/3追記

最近ドリフト法のお問い合わせをよく頂きます。
当初、DPPAの補助的機能として考えあまり使われる事も無いのではと思い、動作の解説等はお客様まかせにしておりました。
算数が不得意な私には、なかなか解説も難しく、以下でどれだけご理解頂けるかはわかりませんが、自分が理解している範囲でHiglasiのドリフト法をまとめて見ます。
(注意:間違ってるかもしれません)
三次元空間を二次元平面で説明する事は大変難しいのですが、付き合ってください。
90°に曲げた針金が平面上に置かれています。
針金の一方は真南、片方は真の北極に向いています。
観測者は針金の曲点とします。
針金を平面から離さず、真の北極を中心に回転すれば、観測者から見た針金の先は日周運動になります。
針金の片方を東側に方向け、右回転すれば、観測者から見た針金の一方は平面から浮き上がります。
この浮き上がりが星の流れる量です。

----- 6/11 追記
浮き上がる部分はカメラ側ですから、星像は南下します。
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東西方向にE(deg)傾いている(極軸エラー)場合、星の流れる量をM(秒角)、撮影時間t(秒)とした場合
M (秒角)= E*sin(t/240)*3600 ------- ① 式
近似すると僕は考えてます。
同様に南北に傾いた場合
M(秒角) = E*(1-cos(t/240)*3600

極軸エラーが東西で1degの場合、1分後の星の流れは15.7秒角です。
極軸エラーが南北(高度)で1degの場合、1分後の星の流れは0.034秒角です。
つまり、ポタ赤で撮影するような短時間の場合、南北の極軸エラーはあまり気にする事はありません。スマホ等の角度センサーの数値で十分だと思います。

・・・で、ドリフト法です。
Higlasiのドリフト法は約5秒間追尾を停止し、30秒、60秒、180秒 追尾し、5秒間追尾を停止します。
仮に以下の結果が得られたとします。
5秒間の追尾停止で星は75秒角流れます。
先ず、右側が下ですから極軸は西側にズレてるハズです。

------- 6/11 追記
誤記訂正: 極軸は西側に ---> 極軸は東側に

問題は縦に流れた30秒角です。
これがドリフト法の設定30秒で測定したモノでしたら①式より
E≒ 3.8deg  つまり極軸を東側に3.8deg調整すれば、極軸エラーはゼロに近づきます。

------- 6/11 追記
誤記訂正: 極軸を東側に ---> 極軸を西側に

同様にドリフト法の設定60秒の場合は
E≒ 1.9deg
180秒の場合
E≒ 0.6deg になります。

如何でしょうか?

ドリフト法30秒設定の場合、流れる量(M秒角)と極軸エラー(Edeg)は①式より次式で近似すると考えております。
E(deg)≒ M/7.85

同様に 60秒設定では
E(deg)≒ M/15.7

同様に 180秒設定では
E(deg)≒ M/47.1

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6/11 6:13追記 朝一でパソを開けると、お客様からご連絡・・・
寝起きの頭では難しくて(苦笑 とりあえず掲載致します。
僕はいつもお客様に助けられてます、、ありがとうございます。。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tomoyu/column/co065.htm

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6/19 追記
お客様から新たなお便りがありました。
ありがとうございます。

東にずれている状態
下にずれている状態
    東西と高度のズレの概念図(1枚に付き2ポイント)です。
    ■が追尾対象(開始位置)で、仮に15度追尾した時に、○が赤道儀で□が恒星
    の位置です。
    それぞれの○と□を結んだ線が星像(ズレ)となります。
表中の条件による計算結果(単位は秒角)です。
   計算根拠です。
    出典は天文年鑑の巻末資料(西條善弘氏)です。

6/23 追記 お客様より・・・
Yさん、いつもありがとうございます。。
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おはようございます。
貴ブログの以下のコメントの件で、また連絡させていただきます。

> 天文年鑑巻末資料のΔHを求める式、これ、δ=0つまり赤緯0°、すなわち天
> の赤道上の星を撮ることを考えると、tan0=0ですから、ΔH=0、すなわち天の
> 赤道上の星は、赤道儀の極軸がどうズレていようが、赤経方向には全く流れな
> い、ということを意味することになりますよね…

6/17(水)PM6時36分のメールの添付ファイル(http://ndl2000.sakura.ne.jp/test/pcal%20xls)を見ていただくとよろし
いかと思います。

セルI2のところですが、SIN((90°- 赤緯)としています。
いちおう計算と追尾動作の辻褄も合っているはずだと思います。

それと改めて概念図(Psim_tan.pdf)を添付します。
●が軸中心です。

TAN0とは一定時間追尾した後でも、赤緯のズレがない状態です。
これは極軸と赤道儀の回転軸が一致しており、互いに同じ大きさの円となってい
る場合です。

いっぽう軸がずれている限り、TAN0にはならないです。
軸が一致していない状態でx時間追尾すれば、赤緯方向にズレが生じていきます。
円の大きさが違うので当然のことですね。
いかがでしょうか。


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12 件のコメント:

kame さんのコメント...

ドリフト法の解説ありがとうございます。(^^

機会を見つけては、Higlasiのドリフトによる極軸追い込みを試行錯誤しているのですが、
整理として、5秒間固定の光跡と星像の伸びが同じ場合、
30秒なら約9.6°
60秒なら約4.8°
180秒なら約1.6°
を基準に修正させていただけば良さそうですね。

何しろ数学も天文知識も希薄なため、手探りで試行錯誤しているので助かります。(^^;


ところでドリフト法に関する記事をネット上で漁ると、東西の極軸合わせは天頂が良いとか南天が良いとか諸説あり、高度に関しても北東が良いとか東西の天の赤道付近が良いと、これも諸説あるようです。
しかし少なくともHiglasiのドリフト法を使用する上では、これまで私が試した結果では、やはり東西も高度も天の赤道沿いが、星の移動量が最も大きくなるため、やりやすいと思います。

それから高度の調整は、南中点付近なら問題無いと思うのですが、高度が十分でない昇ってくる天体や沈みゆく天体を追尾する際には、それなりに重要になってくるのではないでしょうか?
文字ではうまく表現しにくいのですが、自身の位置を球の中心点と考えた場合、天の赤道と南北線の交点から球の中心を貫く線、つまり東西の傾きの軸を、天の赤道の東西を貫く線に置き換えて考えると、高度の傾きも同じ関係になると思うのです。
・・・あまり自信は無いですが。(^^;



またHiglasiの現行法式のドリフト法に関してですが、固定時間を現行の5秒から、例えば倍の10秒に増やすなどしたほうが、よりズレが視認しやすくなるような気がしています。

ドリフト法は、実際の星のズレを認識できない範囲の極軸のズレは検知できないため、本来1枚辺りの露光時間よりも長時間の追尾で行うか、より長焦点(高倍率)にした状態で行うべきものかと思います。
(PHD2等のパソコンを使用したドリフト法では、輝度重心を計算してくれるため、より短時間、より短焦点でも効率的に極軸を追い込めるようですが。)

ただし実際の追尾では
ttp://ryutao.main.jp/tips_howto22.html
↑のページにあるように、星像は諸要素によりある程度肥大すると思いますので、
(焦点距離200mmでの4分間の露光に必要な極軸精度は0.17°との事ですが、個人的には「0.3°くらいまでならまぁ良いかなぁ」と感じております。)
肥大が少ない固定撮影時の光跡なら、パソコンソフトでの輝度重心を使用したドリフト法のように、より鋭敏に極軸のズレを検知できると感じているのですが、、、

私はカメラはEOS Kiss X2とX3を使用しており、
ttp://makoto1974.tea-nifty.com/malog/2015/01/higlasi-ec91.html
↑のページを参考にして、レンズの焦点距離に応じた画角で、ライブビューの5倍か10倍で方位・高度の修正を行うという手順で、極軸を追い込んでいます。

しかし極軸のズレが恐らく0.5°を切った辺りから、解像度不十分なこれらの機種のバックモニターでは、ズレ量の判別がかなり困難になってくるため、ここからはルーペを使用して、OHPシートに印刷した自作のスケールや直線を当てながら確認しています。

この状態で「完全に直線になった」と思うまで追い込めば、後からDPPAで確認してみると、0.2~0.3°くらいまで追い込めている事もあるのですが、この方法は私の集中力にも大きく左右されるため、200mmレンズで4分間の追尾に必要な精度まで追い込める成功率は、現状では50~60%程度です。

なお実際300mmレンズでの追い込みも試行しております。こちらはまだ十分に試せていないのですが、概ね0.3°以内には追い込める手応えを感じております。


しかしいずれにしても、ズレを検出しやすくするためには「光跡がもぉちょっと長かったらわかりやすい気がする。」と感じております。(^^;
もちろんあまり長くなりすぎても、「ズレた量」自体が判りにくくなると思いますので、10秒はさすがに長過ぎるかも知れません。
またこの辺りの感じ方は個人差も大きいところでしょうから、これはあくまでも私の個人的な感想ではありますが、固定時間の延長は、Higlasiのドリフト法で一番難しい「完全に直線になったか」の判定をしやすくするための、一つの方法ではないかと思います。

先日記事にしておられた「V字」方式も、肥大していない光跡を長くするという点においては、通じる点があるように思います。


・・・ご多忙な中、ダラダラと長文を失礼いたしましたが、よりHiglasiを使いやすくするために、ぜひドリフト機能の熟成もお願いします。(^^

竜爺 さんのコメント...

kameさん おはようございます。
後ほど、ゆっくり読ませて頂きます。ありがとうございました。

竜爺 さんのコメント...

kameさん こんにちは
やっと目を通す事ができました(すみません
書かれてる通りで、Higlasiのドリフト法は天の赤道上、南中した星が中心です。ですから東西の地平線近くでは、高度エラーの影響は大きくなります。
また、Higlasiの時限に関する変数の変更は簡単です。ですから、ドリフト法の追尾停止時間を8秒や10秒に変更する事は容易です。
バージョンアップやオーバーホール時に指示頂ければ、無償で対応致します。

kame さんのコメント...

ありがとうございます。(^^
とりあえずは現状の仕様のままで、試行錯誤を続けてみます。
ある程度固まったら、ブログにアップするなどして報告させていただきたいと思います。

またオーバーホールやバージョンアップ時には、仕様変更を依頼するかもしれませんので、その際にはよろしくお願い致します。

購入後に、こんな痒いところに手が届くなんて、Higlasiならではですね。
本当に有難うございます。(^^

竜爺 さんのコメント...

懸命にやってるつもりではいるのですが、なかなか、痒いスイートスポットには当たらない事が多いみたいで、お客様にはご迷惑かけております・・・(苦笑

MASA さんのコメント...

極軸の高度誤差は子午線付近ではあまり影響が無いですが東や西の空では大きくなります
ですのでドリフト法は南の空で東西の誤差を修正し、東または西の空で高度を修正するわけで(PHD2の機能もそうなってますね)通常2方向でワンセットが基本と考えられています
私は面倒でも南と東でそれぞれドリフトさせることにしています

私には実際の現場でコンマ何度で何秒角誤差、とか頭で考える頭脳は無いので、ネジをひねった際の手の感覚を元に、少しずつ追い込んでいます

そうは言っても、動かす方向だけは理解しておく必要があるので、「南の空で南西諸島」(南に星が逃げるなら極軸を少し西に)「東の空で下北半島」(北に星が逃げるなら極軸を少し下に)と覚えています(爆)

竜爺さんの記述では星が南にズレる時は極軸を東にずらす、とありますが、これとは真逆ですね(^^ゞ

(針金の片方を東側に方向け、右回転すれば、観測者から見た針金の一方は平面から浮き上がります)
との記載からは、「針金の一方」はレンズの向きなので、浮き上がるなら星は写野の南に逃げるので、東にずれている極軸を西方向に修正するべきということになりませんか??

私の勘違い、読み違いであれば申し訳ありません(^^ゞ

竜爺 さんのコメント...

MASAさん おはようございます。
いつもありがとうございます。明らかに間違いです(苦笑
本文の浮き上がりは星では無く、カメラですから、星像は南下するハズです。。

HUQ さんのコメント...

上記で計算されたM[秒角]は、"赤緯" 方向のズレですよね。

ひょんなことから縁あって、匿名さんちの新型をデバッグしているのですが、ひとつ気付いたことがあります。
ノータッチガイド前提だと、極軸設置ズレにより写野の"赤経" 方向にズレる量が、結構馬鹿にならないんです。

南中時に南北に沿うように写野をセットして P-Motion を撮影しても、P-Motion のウネウネが、南北だけでなく、東西方向にも進んでいきますよね?
もちろんこれは、P-Motion を撮るために極軸方位を故意にずらしているから起きる現象です。

ところが、本番撮影のために極軸を正確に合わせたとしても、僅かながら設置誤差が産まれます。この誤差により、本番撮影時に赤経方向に流れて星が写ってしまうんです。


極軸が東方向にE[deg]ずれていたとして、南中より西の空を撮るとします。
露出時間をt[sec]とします。
このとき、赤経方向に流れる量 Mra[秒角]は、以下となります。
(本記事の計算と揃えるため、あえて恒星時でなく太陽時で書きます)

Mra[秒角]=E[deg]×cos(90deg-E/2)/(86400/4…日周運動90degに掛かる時間[sec])×3600×t[sec]

E微小のため cos(90deg-E/2) ≒ 1 と近似すれば、

Mra[秒角]≒E[deg]/(86400/4[sec])×3600×t[sec]
≒E[deg]×t[sec]÷6

具体的に数値を入れます。
極軸が東に6分角ずれて設置されていたとします。
このとき、南中を超えたターゲットを露出1分で撮ったとき、赤経方向のズレ量は、

Mra ≒ 6/60[deg] × 60[sec] ÷ 6 =1[秒角]

この程度なら無視できるのですが…P-motion と違って、このズレは露出に比例して大きくなります。

露出15分となると、

Mra ≒ 15[秒角]

です。ここに、更にP-Motion の15分間ぶんのズレ量が乗っかります。
中望遠で撮影するとしたら、そろそろ無視できないレベルではないでしょうか。

極軸が1°も東にずれているとしたら、露出5分で50秒角もズレることになります。
最近の高画素デジカメなら、広角レンズでもズレが現れます。

このズレは、ポタ赤だから起きるというものではありません。
どんなに重厚長大な赤道儀であっても、この現象は発生します。

現実には高度が下がるほど大気差の影響も加味されますし、
ギアの噛み具合によっては P-Motion がこの誤差を相殺して目立たなくなることもあります。

結果として、「うまくいくこともあれば、変に赤経方向に流れることもある」ということになります。

竜爺 さんのコメント...

HUQさん こんばんは コメントありがとうございます。
明日、ゆっくり、読ませて頂きます(苦笑。。

HUQ さんのコメント...

追伸

先の計算は、モデルを簡略化するため緯度0°での撮影を想定しています。

天球上の天の赤道と、赤道儀が思っている天の赤道が E[deg] の角を成して天頂で交わっている、と考えてください。
カメラを天頂に向けて、赤道儀が思っている天の赤道に平行(垂直)に写野を固定し、撮影を開始したと考えてください。
6時間後、被写体が西空に沈むとき、写野上の最初の被写体の位置に対して、沈む間際の被写体がどこに位置しているか、を想定してください。


緯度0°以外の地域では、E は方位のズレ量×cos緯度 となります。

HUQ さんのコメント...

あれー…私、分かんなくなってきてしまいました。(^^;

天文年鑑巻末資料のΔHを求める式、これ、δ=0つまり赤緯0°、すなわち天の赤道上の星を撮ることを考えると、tan0=0ですから、ΔH=0、すなわち天の赤道上の星は、赤道儀の極軸がどうズレていようが、赤経方向には全く流れない、ということを意味することになりますよね…

竜爺 さんのコメント...

HUQさん おはようございます。
主として情けないのですが、、、既に付いて行けてません(苦笑