2012年9月3日月曜日

極軸望遠鏡が無い理由


時々、なぜ極軸望遠鏡が無いかの問い合わせを頂きます。
開発段階では写真の通り、天体望遠鏡のファインダーを付ける方向で進めていたのですが、これがなんとも使い勝手が悪いのです。



使い勝手が悪い上に、高価で、さらにちゃんとした精度が期待できない・・・。
だから、これが嫌で嫌で、仕方ありませんでした。

大手さんの様にウォームホイールのシャフトをパイプ状に設計し、精度良く望遠鏡を挿入する方法が可能なら、光学的な誤差やレチクルに対する目線誤差を除き、機械的な精度はある程度期待できるのですが、その他の方法では精度良く加工しても、無調整で精度を担保できるとは・・・。
計算上、極軸誤差0.1度の精度を保証するためには、570mに対して1mの誤差しか許されません。
開発時、調整ネジ付きのファインダーで400m離れた鉄塔の碍子に対し、何回も調整しました。
方法は
Higlasi-1Aを500倍速で運転しながら、数枚の写真を撮り、カメラのモニターで連続的に切替、モニターで確認できる回転の中心を400m離れた鉄塔の碍子に合うよう、雲台を調整し、合えば、ファインダーの調整ビスを操作し、ファインダーのレチクルクロスを碍子に合わす作業です。
どんなに慣れたって、30分はかかりました。やっと合ったファインダーの調整も、運搬中、何かにぶつけると、調整は狂ってしまいます。。とてもじゃないけど、現実的な操作では無いと感じました。
まだ、Higlasi-1Aは500倍速で運転できますから、回転軸の中心を見つける事は容易ですが・・・。

・・・で、いい方法を模索中、カーチスデジカメ法をご紹介いただきました。
詳細は書きませんが、剛性が満足するものなら、この方法は完璧に極軸が合います。。。

極軸望遠鏡が無い理由で購買リストから外れるリスクはあるのですが、使い物にならないブツを付けるよりは・・・と思い、極軸望遠鏡は開発段階で廃止しました。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

極軸望遠鏡に慣れている人や、赤道儀には極軸望遠鏡が付いているもの…と思う人は欲しがるでしょうねぇ。

higlasiはどこかに極軸と直角の信頼できる加工面はありますか? 板金のカバーをかぶせているので都合の良い加工面は無いのでしょうか?
信頼できる加工面さえあれば、外付けの極望でも極軸に同芯内蔵でも、精度は変わりませんよ。外付けでファインダーの3本ネジ調整だと、ぶつけたらすぐに狂ってしまいますが。
極軸に同芯内蔵といっても、きちんと芯が出ているわけではないですからね。利点があるとすると、遠くの景色を見ながら極望を回して芯を調整するときに「視差」がないことでしょうかね。

カーチスデジカメ法は、ライブビュー画面の芯出し(回転中心)の精度が圧倒的に高いので完璧な方法です。
どんどん発展させてゆくべきです。
ライブビュー画面に極望のようなパターンを表示させて、それを芯に合うように動かせると完璧なんですけどねぇ。
今のところは、透明紙(ビニールなど)にパターンを描いて画面の回転中心に貼り付けるしかないですね。



竜爺 さんのコメント...

匿名さん、こんにちは
板金で重畳誤差0.1度なんて絶対無理です。単純な曲げ精度でも難しい・・・。
フライスで加工しても、ツーピースの軸受け部品をバカ穴ねじ止めだとすれば、相対位置をん十ミクロン精度で合わせる必要がありますから、精巧な治具でもなければ難しいと思います。外付け極望の場合、重畳誤差が5面くらいあるはずですから、それで、極軸誤差が0.1度が保証できるとすれば、すばらしいですね。。

匿名 さんのコメント...

極軸と赤道儀ハウジングとの直角は、重畳面を2面くらいにすることは可能ですよ。面は多くても出来上がってから旋盤にくわえて仕上げる手もあるし。
私は調整式にしてマイクロメーターで(気休め程度に…笑)に計っています。
極軸に同芯の極望といっても、同芯に見えるだけでそうでもないんですよ。
極軸をモーターで高速で回して調整するなら(本番の撮影時の芯で回すので)良いのですが、同芯に見える極望の回転部分は、モーターで回すのとは別の粗動回転部だったり、それとはまた別の極望のための回転部分だったり、そういうのがほとんどなんです。
したがって、正確に調整しても再現性は怪しいです。

同芯にしろ外付けにしろ、ちゃんと検証するにはカーチスデジカメ法が良いですね。そういうことなら、最初から極望無しでカーチスデジカメ法でやってしまうのが良いのです(笑)。普及させましょう!!

ところで、あるホームページに「北極星は大気差で1.5′浮き上がって見える」ので、極望の設置が不正確になる、と言うようなことが書いてありました。
1.5′の浮き上がりはその通りですが、本当はもっと浮き上がってくれた方が、つまり天の極よりも上に向けて設置した方が、天空全般の追尾が良くなります。日周運動の動きを想像すればわかりますよね?

竜爺 さんのコメント...

>モーターで回すのとは別の粗動回転部だったり、それとはまた別の極望のための回転部分だったり、そういうのがほとんどなんです。

これって、同心にする意味が無いですね・・・。
外付けも、加工上は直角が出ていても、固定ネジの側に10ミクロンのゴミがあったら・・・なんて考え始めると・・・病気です(笑

1.5度ですか・・・
これは小さく無いですね。
東西の水平線近くを撮る場合は無視できませんね。

匿名 さんのコメント...

1.5度ではなくて1.5′(分)ですよ。
もっと上にすると、東西の低空を撮る場合に、実際の星の動きに近くなります。

ところで、西條善弘先生の新刊(誠文堂新光社)。
『デジタル天体写真のための 天体望遠鏡ガイド』を買ってきました。
これは20年に一度刊行されるかどうかの名著。天文家のバイブルですね!
天文家の機材の与太話は、これを読めば全部解決します。
望遠鏡の筒の解説が多いですが、赤道儀も極軸の設置精度とか、大気差の誤差とか、竜爺さんの欲しそうなデータも網羅されています。
ビックリしたのは「カーチス写真法」が載っていること!
たった1/2ページですけど、カーチスさんの昔の方法と、デジカメ時代はこうやればよいと解説されています。

竜爺 さんのコメント...

>1.5度ではなくて1.5′(分)ですよ。

ですよね~~
でなければ、困ります。。(苦笑

>『デジタル天体写真のための 天体望遠鏡ガイド』

ありがとうございます。読んでみます。。