2011年12月30日金曜日

86164秒±○○○



前々から気にはなっていたのですが、ネットのどこを探しても、求めるドキュメントは無く、そこそこ高価な赤道儀の仕様にも謳ってない・・・。
赤道儀の仕様としては、ピリオディックモーションと同じ位、重要な項目だと思うのですが・・・。

それは、赤軸を360度回転させる時間誤差で、恒星時なら86164秒±○○○、と書かれているハズの仕様です。

この項目を書くためにはメカ(主に歯車)の加工精度と組み立て精度をどのように補償しているかが問題になります。

例えば、恒星時(86164秒)をキングスレート(86190秒)に変更する事は、パルスレートを0.3%ほど変えれば良く、プログラムを少し変更するだけで簡単に実現します。
少なくても、ステッピングモーターは計算どおり、ほぼ正確に回りますから、装置のばらつきを考える必要はありません。
(なぜ ほぼ かはここでは止めときます)

しかし、歯車の加工や装置の組み立てには、必ずばらつきがありますから、生産において、バラツキを担保し、設計で求める精度で仕上げる、仕組みが必要になります。

Higlasi-1では平歯車のかみ合い基準点が0.1mmずれれば、回転比が設計値に対して0.4%の誤差を生じます。同様にウォーギヤでは0.6%、トータル最悪1%の誤差を考慮する必要があります。

1%のメカ的誤差は恒星時に対し86164±860秒です。
撮影時間を3分とするなら、この誤差は1.8秒に相当し、撮像面の星の流れは約27秒角に相当します。感覚的に、組み立て加工精度が一桁小さくないと、ピリオディックモーションを小さくした苦労が半減されます。

このメカ誤差を一桁小さく見せる現実的な方法は、私がしる限り、誤差を正確に測定し、調整する以外ありません。部品を集め、ねじ締めするだけでは求める精度は実現しません。
では調整方法は?
大手メーカーさんはどうされてるのでしょう?
パートの方がメーターを見ながら、VRを回し・・・そんな方法では無理です。
(無理の理由もここでは止めときます)

Higlasi-1では568889パルスで赤軸を360度回転させます。その時の誤差を測定し、その誤差を補償するパルスレートを計算で求め、プログラムのパラメータを変更し対応しようと考えています。
(ですから1台毎にプログラムは変わります)

higlasi-1 の仕様は 86164±100秒以下(360度に対する誤差0.4度)くらいを考えています。

誤差の測定方法は後日書こうと考えています。

今年の書き込みはこれが最後になると思います。
多くの方々からメールやコメントを頂き、ここまでやってこれました。
ほんとうにありがとうございました。
以下は当ブログの来場者推移です。


来年も宜しくお願い致します。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

竜爺さんの何事も数学的な根拠を元に仮説を立てる、何事も検証する態度と技術に敬意を表します。
今年の6月頃から、頻繁におせっかいな書き込みをさせていただいているのは、Pモーション測定器やカーチス・デジカメ法など、たった1行書いただけで理解され、すぐに実現してしまう才能に驚いたからです。おせっかいが少しはお役に立っているのかな? と勝手に思ってはいますが(笑)

天文ファン(業界)に欠けているのは竜爺さんのようなスタンスだと思います。
たとえば、極軸設置は数学的な根拠なしで「追尾精度よりも極軸設置の方が影響がある」などと頓珍漢な議論しているだけです。Pモーションの原因についても、ネットなどに正しい記述はありません。風評などの「いわれなき根拠」が元になって一人歩きをしてるだけです。

しかし、そのような状況だからこそ、星野写真にはアマチュアらしいが手探りのノウハウがあり、工夫や根性や体力までも必要な楽しい趣味として成り立っている側面もあるのだと思います。

さて本題ですが、
「赤経軸を360度回転させる時間誤差」のご心配は杞憂だと思います。
もちろん、測定したら誤差は現われます。しかし、何日分も回転させればRoot Mean Squareですし、歯車の絶対値は確実なものです。
また、赤経軸は日周運動の追尾のときは、ギヤは常に静かに動いて一方向に押しつけられています。オイル(グリス)ダンプの相乗効果でPモーション以外はコンスタントに正確な位置を保ちます。
……と私は考えていますが、いかがでしょうか?

来年は進展のある年にしたいですね。よろしくお願いします。

竜爺 さんのコメント...

匿名さん 

>頻繁におせっかいな書き込・・・
振り返って見れば、匿名さんのコメントが無ければ、解決してない重要項目ばかりです。
リリースも諦めていたかも知れません。
投稿にはありませんが、
「ただの天文好きの爺さんでは無いですよね~」
「スゴイ人ですね」
って、メールを頂きます。全く同感です。

>Root Mean Square
わ~久しぶりに見ました、この文字列(笑
実際に測定すると、2800mm離れた壁で、1mm弱の変位を観測できます。
角度にして、73秒角。3分間の撮影の影響は0.15秒角ですから、匿名さんの言われるとおりかもしれません。
半導体ではバラツキは明記され、バラツキをつぶす設計ができるのですが、
歯車のバラツキは全く未知の世界です(苦笑
やはり恐いので、ファーストロットは全品データを取ってみます。

来年も宜しくお願い致します。